「売れる仕組み」は消費のメカニズム『ジョブ理論』で考えよう!

「なぜあの商品は売れたのか?売れなかったのか?」本当の理由説明できますか?

皆さんは「ジョブ理論(Jobs to be Done)」という言葉をご存知ですか?これはハーバードビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセン教授が提唱し、世界中で話題となったイノベーション理論です。今回は、事業成長の新セオリー「ジョブ理論」をもとに、アパレル、小売業界で応用させるためのヒントをご紹介していきます。

ジョブ理論におけるジョブ≠仕事

ジョブと聞くと「仕事」の意味を思い浮かべてしまうかもしれませんよね。しかし、ジョブ理論における「ジョブ」とは仕事ではなく、日常のあらゆる行動と関わる「目的」を意味します。これを購買行動で置き換えると、顧客は「目的」を達成するために商品・サービスを「手段」として選ぶ(※ジョブ理論では「雇う」)と表現できます。

つまり、顧客の何らかの目的を確実に達成するための方法を採用してもらうこと=「商品・サービスが売れること」となります。一見遠回りしているように感じてしまうかもしれませんが、ジョブ理論に基づく捉え方は商品開発やマーケティングにおいて、「顧客主語」を忘れないための道標となります。

個々の顧客をじっくりと観察しなければ、ニーズを探りだし、それを達成するための最適な手段(=商品・サービス)を提供することなどできるはずがありません。

アパレル・小売業界でこの理論を活かす場合、どのような発想の転換が必要なのでしょうか。

顧客の「目的」達成のために必要なこと

「今あなたが着ている服は、何のために買ったのですか?」 突然こんな質問をされたら、あなたは何と答えるでしょうか?

●お洒落をして気分よく過ごしたいから?
●格好よく見られたいから?
●流行りに敏感でいたいから?

色々な答え方があるかもしれませんね。しかし、そこには複雑な動機が隠れています。

◎ストレス解消      (気分よく過ごしたい)
◎モテたい              (格好よく見られたい)
◎周りの人に差をつけたい (流行りに敏感でいたい)

これはほんの一例ですが、「なぜその服を買ったのか?」という質問に対する何気ない返答の裏には、その商品を購入するに至った様々な動機が隠れているものです。衣類を身に付けなければ外に出られないという物理的な理由は、ジョブにおける直接的で【機能的な側面】と捉えられます。

しかし、「ストレス解消」には「自分の気持ちを安定させたい」という欲求があり、「モテたい」という願いには「周りの人からの評価を欲する」という【情緒的な側面】が見られます。自分自身に向けた欲求は内在的ですが、周りを意識した欲求は対外的なものとなり、本人の気持ちが向いている方向も真逆です。

「モノを買う」という一見シンプルな行為の背景には、顧客それぞれが抱えるたくさんの想いが詰まっています。ジョブ理論を応用すれば、顧客が「何のためにその商品を手に取るのか」を説明するための様々な要因を考察できるわけです。そのデータをもとに、新たな商品開発やマーケティングを行うことができれば、顧客がジョブを完遂させるために必要なものを、的確に用意できるはずなのです。

意外な競合関係への気づきがマーケティング成功のカギ

他の方法を採用しても自分の欲求が満たせることに気づいた場合、人はより魅力的な方へと流れていきます。服を購入した理由として先ほど例に挙げた「ストレス解消」「モテたい」「周りの人に差をつけたい」という想いは、服以外でも満たすことができそうです。これがジョブ理論において考慮すべきもうひとつのポイントです。

「ストレス解消」が目的ならば、素敵なカフェで美味しいケーキセットを頼んだり、お洒落なバーでワインを飲んだりすることもできます。友人と電話をするだけでも良いかもしれません。「モテたい」のであれば、より自分に合った髪型を求めて美容院に行ったり、ジムに入会して身体を鍛えようと考えたりすることも可能です。「周りの人に差を付けたい」という目的を達成するためには、最新のスマホを購入することもできますし、話題のスポットで撮った写真をお洒落に加工して、Instagramにアップするだけでも想いは満たされることでしょう。

つまり、選択肢が複数存在している場合には、顧客は自分にとってより達成しやすくより魅力を感じる手段を選ぶという心理です。

商品・サービスの競合となりうるのは、同じ業界だけとは限りません。ここでは、「服」のライバルとして、「カフェ」「バー」「友人」「美容院」「スポーツジム」「スマホ」「SNS」などなど、様々な要素が見えてきました。意外なところに見え隠れする競合関係に気づくことこそが、マーケティングを成功させる秘訣です。「ジョブ理論」にもとづくマーケティングを行えば、より効果的に、自社商品やサービスの差別化を追求することができます。

今必要なのは、顧客に求められる商品・サービスの創造

以下のような、同価格の2つの商品があると仮定しながら考えてみましょう。

●Aの商品は定番の黒・白・ベージュの3色展開。メンズ・レディース・キッズのラインがあり,お揃いコーデも可能。

●Bの商品はパーソナルカラー診断がついており、10種類の色から自分に一番合ったものを選べる。

このような選択肢があった場合はどうでしょうか。Aの商品は家族向け(=家族との時間を楽しみたい)、Bの商品はお洒落に悩む人向け(=自分の魅力を知り、自分を好きになりたい)、と分類できるのではないでしょうか。

それぞれの背景には異なるジョブ(目的)が見えてきそうですよね。顧客のニーズと合っていなければ、どれだけ質の良い商品・サービスを用意しても、結果は得られません。

求められる商品・サービスを創り出すためには、まずはゴールを知ることが必要不可欠です。ここでのゴールとは、顧客の求める結果(=ジョブ)なのです。

顧客の購買行動の根底にある動機を見つめれば、発想も自ずと変わっていくはずです。商品が先ではなく、「顧客が先」。この意識を常に持つことが、多様なニーズ、情報が存在する時代を生き抜くヒントになりえます。

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