アパレル業界の成功事例から読み解く!新しい小売のカタチ総まとめ【脱アパレルを実行せよ No3】

【アパレル業界成功事例特集】キーワードは顧客視点の体験価値

「モノを売るバカ」という本が出版され話題になりました。皆さん読まれましたか?

見出しのタイトルがあまりに挑発的且つインパクトがあった為、まんまと手を伸ばし読んでしまいました。
このタイトルで中身が薄かったら、さすがに「バカ」にされた気分になったでしょう。

しかし中身はいたって普通。普通というと語弊がありますが「良い品物であれば売れる」という、これまでの発想を見直すには非常にいい本です。おそらく多くの方は「うんうん、その通り」最前線で活躍されている人は「そんなの言われなくても分かってるよ」そんな感想を持たれるかと思います。

しかしこの本のエッセンスは「そう思ったらなぜ行動しないの?どこを見てるの」といった顧客視点に立ったメッセージ。時代の変化によって消費者の心理や行動は大きく変わりました。良いモノはもちろん魅力的です。しかし、現代の消費者にとって重要なのは「価値」を感じられる体験(コト・ヒト)です。そしてそれらをつなぐプロセスが「ストーリー」といった武器です。

余談ですがその後「モノを売るバカ2」も出版。さすがにこちらは読んでいませんが・・・(笑)

選ばれる理由を「シンボリックストーリー」を創って戦略的に仕掛ける

消費者の心に訴えかける「ストーリー」、そこに共感や感動が生まれ、モノの価値そのものが個々の消費者によって育てられる連鎖。これが体験(コト)となり、ファンを獲得するきっかけを生み出します。近年では「デジタルシフト」への動きが加速していますね。今や消費者の動向をより詳細に探ることができる時代です。しかしながらデジタルを活かした取り組みの多くは、効率の良さ(利便性・効率性・経費削減・時間短縮)などといったハード面がフォーカスされがちです。

しかし、デジタルシフトによって得られる一番のメリットは「消費者の心」を読み取れるという点。「どんなときにどのような気持ちでその商品・サービスを手に取るか」という心の動きをデータから読み解くことで、消費者の求めている豊かな体験に答える事がでます。

「良いモノを提供する!」これは小売業界にとっていたって当然のこと。その良さを伝えるためには「心を揺さぶる術」を学ぶ必要があります。キーワードは「心の変化」幾つかの企業では既に「顧客の心を動かす取り組み」を実践しています。

新しい融合や新たな発想により、唯一無二の場を創りだすことに成功した4社の事例をご紹介します。「ストーリーブランディング」の本質を理解して皆さんの気づきや行動のきっかけとなれば幸いです。

【アパレル業界成功事例の着眼点】
そこにしかない体験価値があれば顧客は自然と集まる

「モノ」が売れない時代のヒント(処方箋)となり得るのは新たな発想に基づいたオリジナリティー。異業種コラボはその良い例です。顧客参加型の体験やエンターテイメント性を高めたイベントも消費者を誘導するきっかけとなりえます。新たな体験を提供している企業はどのような世界観を持っているのか?いよいよ事例考察に入ります。

事例①:ブランドの世界観を肌で感じられる
『ストライプインターナショナル』の取り組み

ストライプインターナショナルでは、ファッション・音楽・食・宿泊でkoeを感じる“体験型店舗”として「hotel koe tokyo」をOPENさせました。1Fは五感を刺激する音楽、食、文化を融合した空間、2Fにはセルフ&キャッシュレスのレジを導入アパレル店舗。夜間(21時~23時)は無人で営業できる新たなアパレルショップを実験中。そして3Fにホテルという滞在の場を提供。

koeのブランドコンセプト「new basic for new culture」をまるごと体験できる施設です。ブランドで消費者を包み込むように、ファッション・音楽・飲食・宿泊という切り口からブランドの世界観を感じられる体験型店舗は、今までにない独創性、オリジナリティーに溢れていますね。

特に2Fの無人キャッシュレスレジに興味を持ち実際試してみました。アパレル業態でこの取り組みはストライプインターナショナルが初。まだまだ実験段階ではあるものの「Amazon Go」やアリババの「無人コンビニ」のような店舗はそう遠くない未来に必ずやってきます。

個人的に確かに利便性や人件費の抑制など期待できる部分はあるものの、嗜好品であるファッションではどうでしょう?「楽しさ・エンターテイメント性」といった要素が欲しいところです。VRやARといった五感を刺激する要素が欲しいなと・・・。

事例②:ブランドコンセプトをイベントにした
『Niko and(アダストリアホールディングス)』の取り組み

Niko and ...を運営するアダストリアホールディングスでは、ブランドコンセプトである「uni9ue sences(衣・食・住・遊・知・健・音・旅・TOKYO)」を体感できる音楽フェスを、今年の秋に初プロデュース。

豪華アーティストをゲストに招いたライブパフォーマンスに加えて、各種ブランドグッズの販売を行うチャリティーストアや様々なアクティブティ&ワークショップも開催され、大きな話題となりました。

「niko and」の強みは何といっても異業種との積極的なコラボにあります。サッカーのJLEAGEをはじめ、飲食など多種多様な、コラボのカタチを追求しています。異業種とコラボするという事は、業界をまたいで新たなファンを囲い込む事ができるという事。ブランドから生まれた「ニコパン」は並ぶ程の人気となり、認知に貢献している好事例ですね。

「今までにない」「そこにしかない」といった強みは強烈な武器です。uni9ue sences(衣・食・住・遊・知・健・音・旅・TOKYO)」の新たなライフスタイルの追求はまだまだ続きます。

事例③:原宿らしさをうまく引き出した
『パルグループ』の取り組み

パルグループでは、原宿から新しいカルチャーを発信すべく、東京・原宿の明治通り沿いに複合型新店舗「ベースヤードトーキョー」をOPENさせました。1Fのポップアップスペースには様々なコンテンツを定期的に発信、2Fには約1万冊のマンガコーナーを配置し、DJブースなども設置しています。

マンガという日本を代表するカルチャーがターゲット層の興味・感心と密接に絡み合っているとの判断で動き出したプロジェクト。配置もあえてシームレスにしうまく融合できています。読み物(漫画)があれば、それだけ滞在時間も長くなる。話題性含めなかなかの着眼点ではないでしょうか?今後どのように成長していくのか?楽しみでもあります。

事例④:ファッション遊園地を実現させた
『JUN』の取り組み

ジュングループでは、Vision FFF「Fashion, Food, Fitness 」というブランドコンセプトに基づき、ファッションを通じてコト・モノを楽しむ文化祭を開催しました。体験型コンテンツや限定アイテム、そこでしか味わえないスペシャルフードなどを用意、各ブランドブースを並べそれぞれの特徴を引き出したファッションのテーマパークを創り上げました。

「文化祭」といえば「お祭り・思い出」といった楽しいイメージが頭に浮かびますよね。「楽しさ」という点では個人的に一番響いたのがこの「文化祭」。開催している人、来場する人、皆が楽しめる空間を目指した試みは新しいですね。

中でも、武道とフィットネススタジオを融合させた「B.I.F BY NERGY」のデモンストレーションや体験は、話題を集めました。同グループは、空手からイメージした女性専用のフィットネススタジオを今年の夏にOPENさせています。

外見だけでなく中身を磨くという日本の伝統的な武道の精神は、現代の忙しい女性たちにも「新たな生き方」を提案する場としてニーズは高いでしょう。「武道は美道へ」というメッセージもインパクトがあっていいですね。空手は2020東京五輪の公式種目としても認定されています。今話題の武道のひとつ。いち早く目を留めカタチにする行動力はこの会社のカルチャーです。

「ストーリー」の創造はアパレルにとって新たな「生き方」の提案

ブランドコンセプトを感じられるような場所や体験を提供することは、そのブランドをより深く知ってもらうだけでなく、消費者自身の生き方にブランドを浸透させることにも繋がります。

重要なのは、ブランドを通して得た体験が消費者の中で新たな価値になる瞬間。新たな価値を感じてもらえたということは、そのブランドを通して「自分だけの体験」を実感してもらえたということ。これは、ブランドが消費者の「生き方そのもの」に関われた証になるのではないでしょうか?

ブランドコンセプトを魅力的に伝えていくことは、個性の磨き方や新しい人生の楽しみ方を提案することと同義です。ワクワクするような体験や、感動を呼び起こせるような取り組みを考えるのは、デジタル(AI)には不可能な領域です。

人のアイデアがつくり出す新たな世界観。これは企業の大小のなど関係なく創り上げる事は可能です。どれだけこれまでの常識を打ち破れるか?この気概にこそあります。

足元の売上、利益を追求し、結局ズルズルと価格競争を繰り返す・・・。こんな事をやっているから、中小企業の企業数はピークの半分まで落ち込みました。下記は文字通り倒産した推移です。価格以上の価値を生み出せない企業が淘汰されてきた確固たる証拠です。

冒頭で「モノを売るバカ」の話をしました。なぜこの話をしたのか?ご理解いただけたかと思います。理解しているなら動かなきゃ!

弊社レバレッジラボは成功企業の事例や新たなビジネスモデルを絶えず研究しています。それらの強み、特徴をつなぎ合わせる事で独自性のある新たな「価値」を創造し続けます。事業の旗振り役をして「最小の労力(資金)で最大の効果(売上)をお約束します。

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