経済産業省も掲げる『デザイン経営』は企業の未来を変える!知っておくべき6つのポイント
経済産業省・特許庁は2018年5月23日、デザインによる企業の競争力強化に向けた課題の整理と対応策を検討してきた内容をまとめ、「『デザイン経営』宣言」と題する報告書として発表し話題になった。今後、デザイナーやクリエイターの役割がどう変わるのか。企業経営者にとってどんな影響があるのか。
「デザイン」と聞くと皆さんどのようなイメージを持たれていますか?
クリエイターなど専門的なスキルを持った一部の人。仕事、活動と捉えている方が多いのではないでしょうか?かつては論理性がないと経営者とデザイナーは水と油のような存在でしたが、時代の価値のパラダイム(価値の変化)により、デザインを経営に活用する時代がすでに始まっています。
レバレッジラボも以前から「経営をクリエイティブに!」をキーワードに「経営」と「デザイン」の融合で新たな価値を創り出す。その為の根底にあるマインドを3つあげてきました。
⑴「はみ出す力」⑵「つなぐ力」⑶「見極める力」がそれです。
今回の報告書を見るとデザインの役割について言及し、プロダクトやグラフィックといったデザインの考え方を超え、企業経営に大きく関わる存在としてデザインを再定義しています。具体的にはブランディングやイノベーションに向けたデザインを重視。まさしく今後企業の成長戦略として「デザイン経営」をキーワードとして打ち出した内容は今までになく画期的ですね。
ちなみに経済産業省がデザインに関しての提言を発表するのは実に15年ぶりだそうです。
日本では「デザイン」と親和性の高い「イノベーション」はどうも「技術革新」と思われている節があります。その為「発明」とほぼ同義のように考えられているのではないでしょうか?そこで「デザイン経営」とは何か?改めて定義を明確にします。
デザイン経営とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです(経済産業省HPより)
社会のニーズを利用者、消費者視点で見極め、新しい価値に結びつけること、すなわちデザインが介在してはじめてイノベーションが実現する。そんな身近にある事の応用や組み合わせであっても、求められる価値であれば立派なイノベーションであるわけです。
「『デザイン経営』宣言」がテーマとなった背景には、企業を取り巻く急激な環境変化にあります「AI(人工知能)やIoTなどデジタルを活用する時代において、「GAFA」と呼ばれる世界に名だたる企業ほど、デザインを新たなビジネスを生み出す経営戦略のリソースとしています。G(Google)A(Amazon)F(Facebook) A(Apple)
しかしながら、日本では経営者がデザインを有効な経営手段と認識していないケースが大多数。その為、グローバル競争環境で最大の弱点となっていますね。経営層人材はデザインへのアレルギーを、デザイナーは経営へのアレルギーを持っているが故に、なかなか乖離を融合させる事は困難を伴いますね。
そこで今回は、「経営」と「デザイン」双方を両立させるにはどうしたらいいのか?知っておくべきポイントを6つにまとめ紹介していきます。
企業が生き残るためには、より顧客に求められる存在として自社のブランドを認知してもらう必要があります。その中心的な戦略となるものがデザイン力。そのポイントを!
1. 顧客価値を追求するデザインは全ての企業にとって重要である
デザインを経営に活かす手法は、1990年ごろから存在しています。90年代は自社のブランド作りのための手段として、2000年代の後半になるとイノベーションを生み出す一つの方法として認められるようになります。しかし、デザインの影響力が強い分野は限られていると思われがちです。
消費者が魅力を感じる未来を創造し、形にする方法はまさにデザインの力です。そのデザインによって共感される企業や組織のビジョンが生まれ、そのビジョンのもとにリアリティあるビジネスモデルを創造していきます。
消費者に支持(共感)されることで、企業は持続的に成長することができます。それに伴ってチャレンジ、成長意欲の向上に繋がって、社員のモチベーションも高まります。このスパイラルで新しい未来を切り拓いていくのです。
2. デザイン力は企業価値にも影響する
人は、モノ本来の価格を超えたところにある物語(体験的・心理的)価値を求めています。
購入からいかににリピートしてもらうか?このファン作り戦略(ブランド戦略)へと移行していることも、デザインが必要な理由といえます。
ブランド価値があればファンは価格に左右されることなく、ブランドがもつ「世界観」との繋がりを望みます。差別化できる物が溢れている時代。ファンを育む、ファンとの絆をつくる、このシナリオがこれからの経営には絶対的に必要な生き残り戦略となると思いませんか?
ある統計によると、デザインを積極的に経営に取り入れる企業の株価は、そうではない企業と比べて10年で228%高くなっているという結果が出ています。これはいち早くデザイン力を経営戦略に組み込み、抜本的な改革に乗り出した結果の表れです。
3. デザイン感覚は経営陣にこそ必要
「多くの人にとってデザインという単語が意味するのはほんの表面のことにすぎない。カーテンやソファの生地のようなもの。私にとって、デザインよりも深い意味を持つ言葉はない。製品やサービスの層を上手く表現する、人間の創造のコアの部分、魂、そういう意味なんだ。」 Byスティーブ・ジョブズ
デザイン力が企業価値に影響を及ぼす最たる例は「時価総額世界No1のApple」でしょう。Appleの製品は、明瞭かつ使いやすく他と一線を画している点が特徴的ですよね。際立ったデザイン戦略を継続し続けたことで、ジョブズの自宅ガレージからスタートした小さな企業が今や世界的大企業として名を馳せています。決して機能面で最先端を走っているわけではない製品だとしても、デザインの力が競合他社のスペックを上回って支持されている好例です。
この重要な「デザイン経営」を誰が先導するのか?新たな組織変革を起こすわけですから経営者自らが「デザイン経営」の意味・背景・効果を理解する事なく成果が出ることなどありません。より本質的に未来を見据えたビジョンを描きながら、自らが先導し、人を動かし、生かす体制づくりこそ経営者に求められる役割です。
4. 人が求める価値は、物質的なモノから心へ。
言語化できない「感覚」をデザイン(可視化)するコミュニケーション手段。顧客と最も近い立場で表現を視覚化できるデザイナー・プロデューサーの存在が不可欠です。総合的なエクスペリエンスのデザインに力を入れて、カタチに実行する力。細部の造形が素晴らしくとも、全体的に使いにくさが目立って使用をやめてしまったアプリやゲームなどに覚えがある方もいるのではないでしょうか?
1つ1つを作り込むことも有益ですが、それだけでは成功はおぼつきません。総合的なプロダクト、プロモーション、顧客ロイヤリティー全てに対して一貫したメッセージ、ストーリーがなくてはいくらいい物だったとしても伝わりません。
5. デザインに限らず幅広い学問を学ぶことが肝心
デザイナーに求められる領域は今後さらに多様化するでしょう。デザインといった表層的な部分だけではなく、マーケティングは勿論、行動心理学や社会学など幅広い分野の知見を磨き、統合させたエクスペリエンスの創造者になるべき意識がなければこれから取り残されてしまいます。
どのような製品やサービスであっても、使用するのは人間です。人間への理解を深めることは、ビジネスを成功させる原点です。
言語化できない「感覚」をデザイン(可視化)するコミュニケーション手段があり、顧客と最も近い立場で表現を視覚化できるデザイン力はもはや不可欠です。
6. 「デザイン」の役割は、経営者の参謀として、
世界観の創出、価値創造を実現する存在へ
今や激動の環境変化によって、UIデザイナーやソフトウェアエンジニア、ハードウェアデザイナー、工学エンジニアなど聞きなれない新たな職種も生まれてきています。しかし、人口減少の影響もあって企業が多くの人材を投入できるわけではありません。
その為、必然的に1人の役割が多くなるのは当然のなりゆき。どこまでがデザインでどこまでが技術かという線引きもなくなりつつあります。その為、よりシームレスなプロデューサー的人材が必要です。
打開策は諦めないコミュニケーション
どうしても「言語や価値観が違いすぎる」「分かち合えない生き物だ」と、どちらかが諦めてしまいがち。それでもなお、決して諦めることなく、お互いが課題の根本をつきとめ、徹底的に話し合っていく。根性論のように聞こえるかもしれませんが、この経営者とデザイナーが見えている景色のギャップを埋められるよう、働きかけ続けることは、どの企業でも誰でもできるはずです。
又「経営陣がデザインを理解すべき」というのはよく聞く話。しかしそれだけではなく、デザイナーも経営のことを理解していく必要があります。当然、お互いがお互いのレベル、スキル、価値観が対等になるなど、はなっから無理な話です。
その為にも背景の違う人を否定する事なく貴重な人材としてリスペクトを持って歩み寄っていくこと、これが第一歩ではないでしょうか。
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