小売革命!『消費行動のアップデート』新型消費モデルがもたらす未来(後編)

国内小売の10倍先ゆく小中国の最新小売事情:今何が起こっているのか?

2016年における中国の小売市場において、ECが占める割合は14.95%と報告されています。今後もますます増え続けるECは、さらに勢力を拡大していくことでしょう。中国EC業界では今、どのような企業が圧倒的な力を持っているのでしょうか。ここに注目してみると、最大手といえる2社(アリババグループ,京東商城[JD.com])が浮かび上がってきます。

しかしこの2社以外、およそ90%の企業は、ECで苦戦を強いられています。大手企業がすでに安定した地位を築いているため、新規参入が厳しい環境が要因です。

日本においては、個々のニーズが分散傾向にある為、一極集中とはなっていませんが、中国では、1日で2.8兆円を売りあげたアリババ「独身の日」の例があるように、その爆発的な「消費行動」には、目をみはるものがあります。これは単純計算で、楽天の年間売上を上回る金額です。

参照元:2016年と2017年の「独身の日」の取扱高比較(24時間)エスカフェ

今や米国を超えるIT&フィンテック大国となった中国の小売ビジネスを抜きにして、小売の未来は語れません。最近よく聞かれるようになったのが「消費のアップグレード」すなわち消費構造の変化について、具体的にどのような変化が起こっているのか?もう少し詳しく見ていきたいと思います。

量より質、モノよりもサービスを重視する消費者

「消費のアップグレード」が起こった背景には、社会的要因と技術面での進展という2つの側面があります。

まず社会的要因としては、中国政府による「第13次5か年計画」が発表されサービス消費の規模の拡大や消費構造の最適化が目標として掲げられるようになったこと、中国の都市化率の向上に伴い変化しているGDP成長率といった点を挙げることができます。
特に上位中産階級と富裕層の拡大、という側面が大きく寄与しています。

一方、技術面での進展という側面では、モバイル端末の普及やテクノロジーの進化です。ECの拡大も技術面の発達により可能になりました。

オンラインを上手く活用するこ最大のメリットは、消費者像をつかむためのデータを手に入れられることにあります。作り方や売り方も変化し始めた現代においては、消費者たちは量よりも質、モノよりもサービス(体験や感動)を求めるようになってきています。

売り手側が今後取り組まなくてはならないのは、自分たちが認識している「消費者像」を常にアップグレードしていく意識です。作ったものを売るのが「プロダクトアウト」であれば、顧客に合わせてモノやコトを提供するのが「マーケットイン」ですが、消費者が今求めている価値は、まさに「マーケットイン」の考えを中心に、プロダクトアウトがその周辺を固めるといった表現がわかりやすいでしょうか!?

デジタル技術を活用して、自分にとって必要なもの、価値があるもの、感動できるもの。このような個々の価値基準を理解したうえで戦略を練る事はもはや前提条件となっています。

企業にとって、今が変革期であり、正念場と言えます。最新の技術や売り方を取り入れながら、自分たちにしかできない商品やサービスを提供するためのヒントは、オンラインとオフラインの融合にあります。この点については次のセクションから、「ニューリテール戦略」と一緒に考えてみましょう。

「ニューリテール戦略」が生み出す、新たな価値

ECの拡大ばかりに注目してしまうと、つい忘れてしまうのがオフラインにある実店舗の役目です。実店舗には実店舗にしかない魅力があるはずなのですが、その魅力を活かしきれない企業にとっては無駄なものに思えてしまうかもしれません。

実店舗の売り上げよりもECサイトの売り上げが多くなると「これからの時代は実店舗よりもEC重視で行こう!」と決めてしまっては非常に短略的な決断と言わざる得ないでしょう。しかし、現代の消費者たちが求めているものを理解している賢い企業は、実店舗に力を抜いたりせず、むしろ新たな価値を提供する場所として活用しています。

小売ビジネスの雄「アマゾン」は今積極的に実店舗への出店を加速しています。顧客との新たなつながりを創り出す事を目的に、各業界大手小売店舗との連携を深めながら、リアル接点の拡大を図っています。これはオンラインで限界がある「体験価値」の提供に他なりません。まさに完全無欠のオンライン、オフラインの覇者になろうという動きではないでしょうか?

アリババグループが2016年に発表した「ニューリテール戦略」でも、オンラインとオフラインの融合を目指した取り組みが行われています。そのコンセプトを体現しているのがアリババグループによる生鮮スーパー「盒馬鮮生」(ファーマーションシェン)です。

詳しい内容は前回の記事でもご紹介していますが、ここでも軽くご紹介しておきたいと思います。このスーパーでは実店舗で購入した商品をその場で調理してもらい、そこで食事ができるサービスが特徴です。たった今、店で購入した新鮮なエビを、そのまま唐揚げにしてもらうことも可能です。会計はアプリを利用したセルフレジ式になっており、キャッシュレスで全てのサービスが受けられます。

このスーパーのさらにすごいところは、オンライン購入もできる点にあります。対象地域であれば注文して30分で商品が自宅に届くという物流網をおさえたサービスを提供しています。鮮度が命である生もの、生鮮商品の適時適材サービスの提供も「ニューリテール戦略」の顧客価値に包括されます。

新たな価値を生み出すために必要なのは、オンラインとオフラインの双方向からのアプローチと、この2つを融合、アップデートさせる顧客理解のアイデアです。オフラインの顧客体験を向上させること。そして、オンラインによる販売を促進させること。どちらか一方に偏ることなく、消費者とのあらゆる接点に仕掛けを創る発想こそが「ニューリテール戦略」の本質です。そのためには、消費者像の理解、分析こそが、最も重要なタスクであるわけです。

これからの時代、本当に必要なのは「ひらめき」

消費者像を分析するためによく利用されているのが、購買行動などが分かる消費者のデータです。このデータ分析に用いられている最新技術はAI(人工知能)です。

詳しい内容は「過去記事」を参照ください。
AI実用化が収益アップのカギとなる!「デジタルシフト」こそ小売の新成長戦略

「AI MD」というジャンルを創り出した国内ベンチャー企業、「ファッション・ポケット」

「ここ半年から2年以内に小売もAI技術を導入が確実に進んでいくはずです。これらに乗り遅れると、競争のスピードラインにも立てないような状況になることが予想されます。

全ての企業がAIの分析結果に従い、同じ商品やサービスを作ってしまうという負の問題も起こり得ます。しかしそれはあくまでも、AIの結果のままに商品開発を行った場合です。AIは膨大なデータから傾向や特徴を見つけ出すうえで、人間よりも素早く正確です。

正確性や作業スピードアップのために、手計算ではなく電卓を使うのと同じで、無駄な手作業を減らすためにAIを活用したデータ分析を行います。しかし、その結果に企業の色を足し、消費者にブランドの価値を示せるのは、作り手である人間だけなのです。

同業他社との差別化、といった小さな要因を追求するだけでなく、データ活用に精通した人材を保有している企業は強いです。これまで常識でやってきた概念を捨てて、背景の違うプロを登用し、新たな血を組織に注入する考えと体制がますます重要になっています。

「デジタルシフト」のその先へ!未来の小売「ニューリテール戦略」とは何か?(前編)

「戦略」×「クリエイティブ」×「デジタルシフト 」はレバレッジラボ

デジタルシフト  ニューリテール戦略

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