「循環型ファッションビジネス」がアパレル業界の未来を変える
時代にハマった!新たなビジネスモデルから考えるアパレルの未来
ファッションに対する価値観は時代の変化と共に確実に変化し続けています。ニーズや価値観に合わない商品があれば、もちろん売れません。そしてそれは大量の在庫となって残ります。
以前の記事でもご紹介しましたが、最近特に大きな問題となっているのがイギリスを代表する高級ブランド、バーバリーによる大量の焼却処分ですね。
『環境破壊とエシカル消費』アパレル業界が考えるべき課題の本質
「叩き売りをしてブランド価値を下げてしまうくらいなら、未使用品であっても焼却処分をしてしまおう」アパレル業界では常識として行われてきた慣習が、明るみになるや否や、多くの消費者や著名人、そして環境保護団体に大きなネガティブイメージを植えつけた騒動。
この問題によって「#boycottBurberry」というハッシュタグまで登場することとなり、大規模な不買運動にまで発展したのは記憶に新しい出来事でしたね。これは、バーバリーが運悪く!?叩かれただけであって、アパレル業界全てに当てはまる負の慣習です。今後成長戦略を描く業界にとって「臭い物に蓋をする」はもはや通用しません!
今、サステナビリティーが注目されているように、企業が将来にわたって持続的に発展を遂げる為には、『環境、社会、経済』に与えれる影響を考える必要に迫られています。中・長期的なミッションの基、企業にもたらすリスクや機会の観点から、なぜそのテーマが重要なのか?まずは客観的に理解する事が重要ではないでしょうか。
今回は、時代の変化から生まれた新たなビジネスモデルを通して「社会性と創造性の革新」をテーマに、新たなビジネスモデルの可能性について、掘り下げていきます。
在庫廃棄問題は解決できるのか!?
そもそも売れ残りというものは、販売予測の失敗が起こした産物です。消費者から直接「何を買うか」を聞くことができないため、結局のところこれまでは販売実績(POSデータ等の過去実績)に基づいた結果を基に予測を立てる事がごくごく当たり前でした。
個別の企業が経験値と共に独自に予測するため、消費者の動向を正確に予測することは難しく「買った理由」や「買う理由」の答えをそもそも持ち合わせていません。
アパレル業界では、売れ残りは全体供給量の5割を超えることも珍しいケースではなく、いかに需要予測が機能していないことを物語っています。しかも、セールの集客時期を見込んで商品を作るといった奇妙な慣習は状態化しています。
とはいえ、このまま「売れ残り」が増え続けていくのか…。
この慣習を変える切り札!これはデジタル技術無しでは語れません。既に人工知能(AI)は様々な分野で用いられています。アパレル業界も例外ではありません。AIの活用により、消費者の行動分析をより正確に素早く見極めることができ、個々の消費者がどのような手段で購入しているか、どのタイミングで購入に至るか、という詳細な情報を即時に取得できるようになっています。
これはWebの世界に限らず、リアル店舗でも行動、視野、滞在場所から予測してデータを集め、購買傾向を導きだすリアルを行動を可視化した科学的なアプローチ。株式会社ABEJAが業界に先駆けて開発した「ABEJA INSIGHT」はまさに実証結果が視覚化できる優秀なAIツールです。
捨てない勇気!新たな発想で今までにない感動が生まれる
近年話題となっている用語に、冒頭でお伝えした「サスティナビリティー」と「エシカルファッション」があります。改めて定義を明確にすると「サスティナビリティー」とは「社会に影響を与える・持続可能な」という意味で、「エシカルファッション」とは「人と地球に優しいファッション」という意味ですね。
使い捨てではなく、長く楽しめるもの。環境にも配慮した新しいファッションのかたち。「服が作られるまでのストーリーを含めて、その商品を着る体験を楽しむ」こと。このような新たなファッションが求められるようになってきていますね。
となると「売れ残り」を大量に作り処分し続けている企業は、「何も考えていない企業」というレッテルを貼られてしまいます。
そんな中で登場したのが「捨てない」という選択肢です。先ほど紹介したデジタル技術と「捨てない」選択肢を組み合わせて、新たなビジネスモデルを展開している企業が存在します。3つの事例から様々な可能性を考える気づき、きっかけとなれば嬉しい限りです。
① ゲーム性を活かした体験型:注文が増えると価格が下がる
『Scales(スケールズ)』
アパレル・EC雑貨サイト『スケールズ』では、売れ残りを廃棄するのではなく、売れ残りを作らない新たな方法として、「個別受注生産」の取り組みを行っています。「注文者が増えると商品の価格が下がる」という仕掛けがあり、商品価格が下がっていく様子をリアルタイムで消費者が確認することができます。
加えて、アンバサダー制度(アフィリエイト)も導入しており、SNSで商品リンクを拡散できる仕様。買いたい人が増えれば増えるほど、その品物を安く手に入れられる。商品に興味を持った消費者が協力して価格を下げる。このような今までにないゲーム性が、消費者の間に新たなワクワク感をもたらす創意工夫が随所にあります。決済はクレジットカードに限定しているため売掛金の回収もスムーズ。
共同購買といえば「グルーポン」の「おせち事件」を思いだしますが、社会性という理念を十分感じさせる取り組みである為、今後の動向に注目しています。
② 逆転の発想で新たな価値観:値段を上げる原因を取り除く
『リネーム(RENAME)』
新業態ブランド『リネーム(RENAME)』では、国内ブランドやOEMメーカーの在庫を買い取り、ネームタグを外して適正価格で販売する仕組みを構築しました。タグを取り除き、ブランドバリューをなくすことで定価より安くお得に販売できるという発想です。安いものでは定価の3割程度で購入でき、その他の品物もプチプライスで購入可能。ブランドという付加価値にとらわれず、価格と価値が見合った物を購入できるスタンスは、消費者にとって嬉しいサービスとなりそうですね。「在庫をなくす」ための第一歩という意味では、評価できる取り組みと言えますね。
③ 究極のリサイクルを目指す:いらない服から新しい服を創る
『H&M×HKRITA×Novetex』
H&Mが中心となり、香港繊維アパレル研究開発センター(HKRITA)と香港の紡績会社Novetexが共同で開始したのが、素材や原料を新たに繊維化する次世代のリサイクル方法です。
工業製品ではすでに行われている方法ですが、アパレル業界ではこれまで例がない分野ということもあり、「超循環型リサイクル技術」として注目されています。熱水処理によってコットンとポリエステルを高品質なまま分離することで、新たな原料として再利用できるように加工します。
この事業には愛媛大学や信州大学といった日本の企業も参画しています。廃棄物ゼロを目標に「100%循環型ファッション業界を創る!」をミッションとした取り組み。売れ残りを作らないのではなく、売れ残ってしまっても、それをリメイクするだけではなく、新たな原料として加工しリセットする。そんな技術がもうすぐ誕生するのです。
まとめ
売れ残りを処分し続けてきたアパレル業界では、今すぐに「売れ残りを出すな!」と言われても即実行に移すのは容易なことではない事は重々承知しています。しかし「作って売って終わり」の時代はもう終わりにしましょうよ!
大切なのは「作る前から作った後までの一貫したストーリーであり、より顧客にわかりやすい透明性」です。
現代の消費者は、豊富な情報によって鍛え抜かれた目で、厳しく商品を選びます。その商品がどのように作られたのか。その商品を作る企業はどのような考えで販売しているのか。何か少しでも共感できない部分があれば、途端に「買わない」という選択肢を常に持っています。
であれば、消費者が注目し、価値を感じるのは「作り手の顔が見えて人と地球に優しい愛すべき一品」ではないでしょうか?恥ずかしながら、最近はまっているドラマ「下町ロケット」を見て感慨深い影響を受けました。一中小企業でありながらまっすぐ社会や消費者の未来を見据えた物作りの原点、姿勢に。
理想を実現するためには「ここにしかない、こだわりのストーリー」を生み出すこと!理念と共に実現する為のプロセス、指針を示しプライドを持ちながら真っ直ぐ目標に向かっていく姿勢に必ずや消費者は気付くはずです。
デジタルシフトが叫ばれる今、確かに利便性や効率性は格段に高まりました。しかし本来の目的はお客様の心を揺さぶる感動や、価値を創る事が土台にあってこそより大きなレバレッジを生み出します。私も今改めて自分に何ができるのか?模索している最中です。新たなレバレッジをカタチにする為に・・・。
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