「デジタルシフト」のその先へ!未来の小売「ニューリテール戦略」とは何か?

小売業界、大変革時代!アリババの「ニューリテール戦略」から見る未来

「何か欲しいものがあるとき、あなたはどのように購入しますか?」

スマートフォン経済が拡大し、デジタルテクノロジーの普及が消費行動にさまざまな変化をもたらしてる中、国内でもようやく「デジタルシフト」が一つのキーワードとして浸透してきたかな…という印象を受ける一方で、ウェブサイトやECサイトを用意しただけで満足している企業もまだまだ多いのが現状です。

ネットの世界は想像以上のスピードで、日々、進化し続けています。現代の消費者は、珍しさや人目を惹きつけるもの、そこから得られるワクワク感や特別な体験に価値を見出しています。現在の消費者像をいち早く分析し、行動しているのがジャック・マー(馬雲)会長率いる「アリババグループ」です。

アリババグループは2016年10月に「ニューリテール戦略」を掲げ、「10年~20年先の未来に訪れるだろう消費者体験を中心に考える」というコンセプトを実現させるためのプロジェクトに取り組んできました。

その本質は、テクノロジーを活用したリテール(小売)ビジネスの変革です。ビジネスのやり方が変われば、消費者もこれまでなかった新たな体験をすることができますね。

これまでにない新たな体験とは一体どのようなものなのか?今回は、「ニューリテール戦略」大解剖と題して、具体的な事例・根拠にフォーカスしていきます。

より豊かな消費者体験を提供するために

ニューリテール戦略はO2O(=オンラインからオフラインへ顧客を誘導する仕組み)やオムニチャネル(=実店舗とECサイトの区別の無いリアルタイム・シームレス)とどう違うのか?まずはこの問いに対して展開していきます。

O2Oやオムニチャネルは、双方向の集客や在庫・ポイントの一元化など、オンライン・オフラインの特徴、利便性を生かした個別の取り組みを融合させた施策です。一方、ニューリテール戦略は、ネットの世界と現実世界を分けることなく、オンラインとオフラインを自由に行き来できる「未来型の体験」に重きを置いています。

例えば、店舗のバーコードは店側が商品を管理するためのツールの一つです。しかしニューリテールの場合は、消費者自身が能動的にスマホでバーコードを読み取り、その場で情報を収集し、キャッシュレスですることができます。また、店舗で購入した商品を専用バッグに入れておくだけで自宅に配送してくれる、などの利便性の高いサービスも展開されています。

今や米国を超えるIT&フィンテック大国となった中国ではスマホによるモバイル決済が定着してレジレス店舗が急激に広がって、米国でも同様な変革が始まって「ポストECのニューリテール時代」と言われ、まさに国内小売も実用段階まできています。

ニューリテールに基づく取り組み

もう少し詳しくニューリテールの具体的な事例を見ていきましょう。アリババグループによる取り組み、日本の良品計画の取り組みなどを簡単にご紹介していきます。

  • 事例1● 『ファッションAIコンセプトストア』の場合

香港理工大学内にオープンしたばかりのこのストアは、ファッションAIに基づき、個々の顧客に最適な着こなしを提案します(アパレルブランドの取り扱いは現時点で「ゲス」のみ)。AIによるコーディネート案は、タオバオの50万ユーザーのファッション購買データ(属性・色・スタイルなど)をもとにしています。店舗でタオバオIDとAIを連携して服を手に取ると、手に取った服との最適なコーディネートが提案されます。

様々なデジタル技術が駆使されているため、コーディネート案は自宅にある過去の購入商品との組み合わせも可能です。しかも試着の際、デジタルサイネージ画面を活用することにより、デジタルを通して試着室に商品が用意され、試着室内から変更の意図を伝える事も可能です。これだと試着室と売り場を何度も行き来したりせずに快適な試着体験することができますね。

一人一人に合わせた専属コーディネーターが配備されているのと同じ状況をAIの活用によって作りだせるという事です。まさに近未来体験ショッピングの新たなカタチ。取得したデータの一部はファッション業界や大学機関、小売業へと公開され、ファッション業界全体のテクノロジー活用と普及にも貢献しています。

  • 事例2● 盒馬鮮生(ファーマ―ションシェン)の場合

2017年に立ち上げられてから、中国で大きな人気を集めているこちらの生鮮スーパーは、「食事ができるスーパー」としても有名な盒馬鮮生(ファーマ―ションシェン)。食事ができるというのは、単にイート・イン・コーナーがあるという意味ではなく、買った食材をその場で調理し、そこで食べることができる場所が提供されています。

決済はアプリによるセルフレジ形式。実店舗に出向かなくてもアプリからオンライン注文も可能です。半径3キロ以内であれば30分で商品を受け取ることができるというから驚きです。時間を少しでも有効活用したい忙しい現代人にとっては理想的な販売スタイルになり得ますね。

  • 事例3● 靴老舗ブランド「Belle」の場合

Belleでは3D計測サービスを活用して、オフラインにて試着データ(足サイズの3D計測データ)を収集しています。集めたデータはオンライン・オフライン問わず、個人データとしてストックされます。3D計測機器では、裸足のまま台の上に立つだけ。たった数十秒で足の3Dスキャンデータを保存。足のサイズ・幅・高さ・左右差・土踏まずの高さなど、靴を購入するために必要なデータが瞬時に確認できます。ネットで注文するのが難しい靴も、このようなデータを活用することで自分にぴったりと合ったものを選べるようになるわけです。

  • 事例4● 無印良品「MUJI HOTEL」の場合

2018年1月に、中国関東省深セン市に開業した良品計画による「MUJI HOTEL SHENZHEN」。ホテルには、旅行用品に加えて、大型家具や収納用品、食品、服飾雑貨、化粧品など、暮らしに役立つ道具が揃えられています。利用客は滞在中に様々な商品に実際に触れることができる為「MUJI」の商品を体験型で理解できます。こちらもホテル、レストラン、売り場を融合した「ニューリテール戦略」の一例です。

消費者が求めているもの=ニューリテールに基づく商品・サービス提供

ニューリテールには、データ収集だけでなく消費者が楽しめるようなエンターテイメント性が含まれます。そこには、商品・サービスを通して消費者に感じてほしいブランド体験が企業の理念と一体となり、随所に散りばめながらブランド理解、価値を促進させます。

オンラインで得た消費データ(ビッグデータ)を分析することにより、実店舗の体制づくり、例えば、オーナー属性、従業員数、店舗面積、投資可能性など、収益バランスも「見える化」される為、最小限のリスクと最大のリターンを緻密に練ることも可能です。

  • 自分らしさを知りたい・感じたい
  • 幸せな自分を実感したい
  • 一分一秒でも無駄を省きたい

オフラインとオンラインが融合したニューリテール戦略では、SNSや口コミなどの相性もバッチリでしょう。

重要なのはデータの活用!

オフラインで収集したデータ、そしてオンライン上で収集したデータは、企業の未来に関わる重要な情報です。このようなデータを「適切に扱える企業や人」がいてこそ、ニューリテールな時代を戦う為の前提条件となります。世界で起こっているこの「小売革命」をただ指をくわえて見ているだけでは、瞬く間に淘汰されてしまいます。それほどまでにテクノロジーのスピードは物凄い勢いで、小売業界に革新をもたらしていく最中です。

大切なのは、データを通して消費者像を見抜く力

デジタルシフトは言葉のごとく、新たな進化を武器にする戦略!変化激しい時代のなかで新たに登場した「ニューリテール」。この背景と理由を十分理解し、来たる時代の為に「ではどうしたらいいのか?」「今の体制化で変革可能か?」「リソースがなければ誰と組めばいいのか?」本気で未来を見つめ、考える着眼点が今求められています。

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