アパレル業界の今後に未来はあるのか? 求められる人材ニーズに大きな動き〈後編〉


社会の「デジタル化」によってより複雑で、膨大な情報量と共に変化していくニーズ。そんな中、これまで当たり前であった常識や秩序を新たな創造に向けて破壊していくことの重要性を前回お届けしました。

過去の成功体験があればあるほど今までのやり方にこだわって旧来型の価値観で経営をし続けてしまうと確実に大きな波に根こそぎさらわれてしまいます。今回は、そんなディスラプション(秩序の創造的破壊)を機に何を目指しどう変わっていくべきかについて、変化している企業を例に出し、今後、業界が進むべき方向性について提言していきます。

アパレル業界の今後:人材ニーズに大きな動き

いづれも好調が伝えられている企業は、アパレル業界の今後を見据えて「デジタルシフト」人材確保に動き出しています。

「アースミュージック&エコロジー」のストライプインターナショナル(岡山市)は、2018年1月末までにネット通販事業の担当者を40人と前年比で2倍にする。ネット専用の商品を拡充し、サイトの使い勝手を向上させる。

「ユニクロ」を手がけるファーストリテイリングは、データアナリストなど専門人員の採用を増やす。同社は東京の有明に大型物流倉庫を備えた新オフィスを開業した。物流や生産も含めた業務刷新を進める方針。社内に専門人材を増やすことで、社外のIT企業との連携も進めやすくする。

カジュアル衣料大手のアダストリアは、IT人材の中途採用者の給与水準を幹部並みの高水準に引き上げられる仕組みを導入した。人工知能(AI)やビッグデータの解析などに強い人材を集め、人手に頼る部分が多い受発注や在庫管理の作業を効率化する。

アパレル業界が今後獲得すべき人材は、
デジタルスキルを駆使してビジネスを推進できる人材の必要性

今までアパレル業界で主役だった「クリエイティブディレクター」や「MD」といった職種ではなく、今後は、デジタルスキルを駆使してビジネスを推進できる人材が求められてきています。なかでも、デジタルマーケティングはもちろん、Eコマースの知識も兼ね添えた人材が重宝されています。

例えば、データ分析スキル、Google Analyticsを始めとした分析ツールのスキルや、リサーチ能力、データサイエンスの能力が重宝されるでしょう。

又、ネット広告の知識も重要です。EC運営するには、1度ECサイトを訪れた消費者がネット検索をする際に、リターゲティングアドを駆使して、自社のバナー広告を戦略的に表示することが必須です。その為にはネット広告全体の知識が大切になってきます。

結果として、構造改革には、デジタルネイティブな若手の力が必要です!年功序列な組織体制から脱却して、若手の力を引き出す人材活用を積極的に推し進める企業にしか勝機が訪れないと言っても過言ではありません。

「パーソナル化」という新しい価値観が構造改革を推進させる

これまで、アパレル業界で垢のつくほど使われてきた言葉に「個性」という言葉があります。あまり大きな意味もなくむやみやたらに「これからは個性の時代だ」とか「個性のあるあなたを磨く」などといったキャッチコピーを目にしたことがあるはずです。

しかしながら、これまでのアパレルの流行に、本当の意味の「個性」はありませんでした。あったのは「個性という付加価値を付けた流行」だったといえるのではないでしょうか?

しかし、これからはそうではありません。これからの時代において使われる「個性」とは本当に本来の意味である「個々がそれぞれ持つ特性」になって行くはずです。それがパーソナル化という価値観です。

情報が膨大に膨れ上がったことによって訪れたニーズの多様化は、このパーソナル化の結果だとも言えるのです。今や、ニーズは売り手が仕掛けて作り出すものではなく、消費者個人が得た情報から生まれる個性的な価値観に依存して成り立っています。つまり、物の価値もそしてニーズも消費者の手に帰ったという事なのです。

アパレル業界の課題の本質は、革新的原点回帰の「サービス化」

サービス化というのは生活者がこうありたいという姿、ライフスタイルを企業が提供するという事です。つまり、個人がそれぞれ個性を持った価値観とニーズを持った今、業界として答えるべきは業常識でも流行でもなく、そのお客様個人の要求に対してだという事です。

たとえば、これまでは、スキマ産業という言葉が表すように起業のポイントとしてニッチな要求にこたえるというものがありました。しかし、それが「ニッチ」であると決めていたのは業界であり流行であり常識です。そうなってくると、いま、ニーズの主導権が消費者に帰ってしまった時代において、それがニッチであるかどうかすらこちらに選択権はないのです。

そこで、重要なのが、上っ面だけじゃない究極の「サービス化」です。
消費者の要望に応え、消費者の望む価値観を提供し、見合った価格をつける。ある意味これは、大量消費時代に日本の企業がなくしてしまった、商売の原点であり、最もトラディッショナルな商売の在り方であると言えるかもしれません。

全ての顧客に対してとは言いません。上位20%の顧客をセグメントして、他社にはない究極の「サービス」を提供することなら、実現可能なはずです。そしてそれらを補完するのが「デジタルの力」です。それ故にデジタルをビジネスに活用できる知見とスキルがある人がキーマンとなるのです。

アパレルもこれからは「顔の見える業界」へ

消費者の個人的なニーズを把握する。そのためには、お互いがFace to Faceで互いとの意思の疎通が取れる環境でなければ成立しません。お客様のニーズを知り、価値観を知り、そして、それに即応できる体制を整えること。それは、企業側が、お客様に一貫した企業の姿を見せるべく、部署の間にある垣根を外し、ボーダレスでシームレスな体制を整えておかなくては実行不可能です。

個性的で先進的な商品を消費者に提供し、その望みに即応するためには異業種との業務提携なども重要なファクトとなってくるでしょう。全てを自分でやっていては、もう時代のスピードには間に合わないのです。

前段で、消費者の願いをかなえそのニーズに即応して行う商売、それを「原点回帰」と表現しました。それに間違いはありません、しかし、この時代の中でそれをやるには今まで通りのスピードではだめなのです。

デジタル活用で経費削減と売上拡大を同時に実現し、自社にないノウハウ、スキルはアライアンスによって補い、そして自分たちは自分たちにしかできない創造的な仕事をする。そうやって初めて、「顔の見える企業」として、個々のお客様のニーズを満足させられる、その人だけのマイストアを目指す方向にこそチャンスはあります。

消費者の記憶に残り、パーソナルな要望、ニーズを追求する「顔の見える企業」こそ今後のアパレル業界が目指していくべき姿ではないかと考えています。

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