2極化するファッション市場?その理由と脱却すべき解決策
ファッション市場に起こった2極化の流れ
大手含め多くのアパレル企業が大苦戦を強いられている中、勝ち組と呼ばれるファッションカテゴリーが存在します。それは、ファストファッションとラグジュアリーブランド、この2つのカテゴリーの好調さはとどまる気配さえ感じない勢いを維持しています。
2極化の両極が好調な一方で、苦戦するのは真ん中に当たるどっちつかずのブランドです。なぜ、このような現象が起こっているのか?今回はその理由と共に、進むべき方向性、改善策について提言していきます。
手頃な価格で手に入れられるものと、覚悟を決めてから購入しなくてはいけない価格の商品。両者は「価格」という面では真逆の性質を持っていますが、この二者が好調ということは、現在のファッション市場が二極化している、ということを示しています。
ファストファッションとラグジュアリーブランド。価格で考えれば完全に正反対の傾向を持つ二者が、どうして成功を収めているのでしょうか?一体どこに「強み」があるのでしょうか? それぞれの魅力についてまとめながら、顧客が感じる価値とは何なのか、を分析していきます。
ファストファッションの魅力と顧客にとっての価値
まず、ファストファッションの代表的な例としてはH&MやZARAなどを挙げることができます。流行に敏感なターゲットを意識した素早い商品化、そして「多品種生産・少量販売」というビジネスモデルで成功を収めています。
また日本で生まれたユニクロ(UNIQLO)もファストファッションに分類できますが、H&MやZARAとは異なるビジネスモデルで成功しています。ユニクロの場合は、素材にこだわった優れた商品を研究・開発し、「大量生産・大量販売」で世界中の市場に影響を与えています。
売り方は違っても、「ステキなものを手頃な価格で手に入れられる」というコンセプトは同じです。最新のファッションアイテムが手頃な価格で手に入れられるのであれば、そこに「価値」を感じる顧客がたくさんいる、ということが証明されたかたちですね。しかし、顧客はただ「安い」から買うのではない、という部分にも注目しなくてはいけません。「低価格」という魅力に加えて、「利便性がある」または「価格以上に良質な商品である」という部分が、あって購買動機につながります。
ラグジュアリーブランドの魅力と顧客にとっての価値
ラグジュアリーブランドとは文字通り、「贅沢」「豪華」「高級」な商品を指しています。ラグジュアリーブランドで売り上げを維持しているブランドには、ルイ・ヴィトン、エルメスなどを挙げることができます。長年安心して使い続けたい品物。世代を超えて大切にしていきたい品物。そのような魅力がラグジュアリーブランドにはありますよね。
商品が生まれるまでの膨大な時間と職人たちの試行錯誤の歴史、様々なストーリーが、ブランドの「信用」を支えています。そして、希少価値や時間価値が沢山詰まった、贅沢・豪華・高級な商品が仕上がるのです。ブランドの原点は「信用」です。たとえ10万円、100万円と出しても、何十年も使える安心できるブランドの品物を手にしたい。そしてずっと大切に使い続けたい…。ブランドの「歴史」や「信頼感」を価値と捉える顧客を裏切らないためには、ラグジュアリーブランドとしての信用を維持し続ける、企業側の努力が必要不可欠です。
信頼感や安心感は、顧客が商品を購入する際の動機となります。この動機は商品の「付加価値」となり、長年愛用される根拠にもなります。時代の流れに左右されることのない「永遠の価値」。そこに顧客は魅力を感じるわけです。ラグジュアリーブランドの最大の魅力は、「歴史」「信頼感」「安心感」と言えますね。
売れ残りを一気に値下げしたり…といった行為はブランドの信用に傷をつけてしまいます。これまで長年、同じブランドを愛用してきた人にとっては、「どうせ安くなるなら、少し待ってから買おう!」と考えるセールハンターと同じ品物を持ちたくない、と思う人も数多く存在します。
結果として、以前の優良顧客は激減し、セール品目当ての消費者が主な顧客層となってしまいます。成功しているラグジュアリーブランドが安易な値下げをしない理由はここにあります。そして、値下げをしなくても愛される理由もここにあるのです。
中間(ミドルプライスゾーン)ブランドが考え直すべきこと
ファストファッションとラグジュアリーブランド。このどちらにも属さない中間ブランドは、策のない安易な価格競争に自ら陥り、消耗戦を繰り返す悪しき傾向にあります。問題はこの「値下げ」の常態化にこそあります。
実際のところ、値下げをして売り上げを作る、というビジネスモデルは、その場しのぎの一時的な回復はできても、将来的な成功には繋がりません。粗利、経費削減を意識した取り組みは、低価格な商品・サービスの提供や人件費削減のためにリストラを行うことになり、会社全体の士気も下がっていきます。
それでも売り上げは回復せず、十分な対策もできないまま消失してしまうブランドは枚挙にいとまがありません。中間ブランドは、ファストファッションとラグジュアリーブランドのどちらにも無い、独自の魅力を見つけ出さなくてはなりません。
低価格で良質な品物を作るのは中小企業にとっては難しいことでしょう。そうであるならば、たとえ価格が高くても、顧客にとって「買う・選ばれる理由」を提供できる明確な何か?が存在するのであれば、大きな武器になりえます。自社の商品・サービスの「強み」を改めて考えることはとても大事です。しかしもはや右肩下がりの市場では「モノ」発想だけでは通用しない時代でもあります。消費者の本音は「モノが多すぎて選べない」「差がよくわからない」「間に合っている」・・・といった感情。つまり解決すべき問題はモノの外にこそ存在するのではないでしょうか?
売れるかどうかの問題は「価格」ではなく、「魅力」の伝え方にあった
短期的な利益を優先して、策のない値下げに走ると、ブランド価値・信用を自ら下げることになります。「そんなに安くなるなら、値下げしてから買えばいい」。こんな風に思われてしまったブランドは顧客からの信頼を勝ち取れません。
では、どうすれば「価値あるブランド」となれるのでしょうか。そのためには「顧客視点」がヒントになります。顧客が何に価値を感じるのか。どうすればその価値を伝えられるのか。常に、顧客視点で独自の強みを磨く姿勢が役立ちます。
ファストファッションであれば、ファッション好きの顧客の購買欲をくすぐる様々な仕掛けが、成功に導きました。その背景にある様々な工夫を無視して「低価格」だけを真似して闘おうとしても、望む結果は得られるはずがありません。
ファストファッションの登場により、ファッション市場の「価格定義」は確かに大きく変わりました。しかし、全ての企業がH&M、ZARA、ユニクロのような売り方ができるわけではありません。価格競争で消耗するよりも、むしろ良質の商品を生み出し、手に取ってもらえるような魅力的なブランドストーリーを生み出し、効果的に伝える努力をする方が、はるかに確実な成功へと繋がるはずです。
時代は、確かに二極化しています。方や「低価格」、片や「高価格」、伝えたかったポイントは、それぞれが独自のポジションを維持し、明確なターゲット、コンセプトに対して、最高の顧客サービス、ブランド体験を提供している共通項です。
「思考」と「行動」を変革せよ!
今までのやり方は、通用しないことを自覚せよ!
「自分の思考が物事の原因であり、その結果としての現状があるのだから!」
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