『環境破壊とエシカル消費』アパレル業界が考えるべき課題の本質
―世界の深刻な環境問題に目を向けて洋服のこれからを考える―
目先の利益や、戦術、手法に目がいきがちな業界課題!そんな金太郎飴議論から離れて、もっとやれる事があるんじゃないか?要は「アイデア」と「行動」。メッセージが魅力的であれば。新しい未来のイメージを具現化することに、何らかの積極的な関わりを持とうとする人は必ず現れます。
共感できる内容であればメッセージは広い範囲にどんどん「一人歩き」して広がって生きます。
それが一個人であろうとも、多くの人々の心の中にしまっていたものに火をつける事は決して珍しい事ではありません。
『手頃な価格で旬のデザインを楽しめるファストファッション。』
「飽きたり古くなったりしたらどんどん捨てて、新しいデザインが出たらまた購入すればよい」効率の良さを求める現代人にとっては当たり前ともなった消費行動ではありますが、このような「買って捨てて、また買う」というサイクルに疑問視する人々が増えてきています。
そんなエシカル消費に伴って「エシカル・ファッション(ethical fashion)」が話題になって久しいですが、その試みが大きくフォーカスされる事はありません。なぜか?ここには明確な理由が存在します。
①誰がエシカルであることを決めたのか?
②エシカルとの繋がり、動機は明確か?
③主張の延長で価値の押し付けになっていないか?
今回は、アパレル業界が考えるべき、エシカルの本質を新たな視点で提言します。
作って売って捨てられる、を繰り返している現状
ファストファッションとして販売されるアパレル製品を作るために、第三国で劣悪な労働環境を強いられながら命を落とす人々がいることをご存知でしょうか。
大量生産による薄利多売を基本とするビジネスモデルの多くは、貧しい国の働き手によって支えられています。そのような人々を犠牲にして生み出された商品は、長年利用されることなく、短いスパンで廃棄されます。そしてまた新たな製品が作られ販売され、短期間で捨てられる…というサイクルを繰り返しています。
しかし、このままでは、地球は廃棄物の山で埋め尽くされてしまうかもしれません。アパレル製品だけに限らず、私たちの生活の中で大量に出るゴミの問題は、世界中で深刻な問題を引き起こしています。大量のゴミによって海が汚染され、山は破壊され、命を落とす生き物たちがいます。
近年特に問題になっているのが、プラスチック材やビニール袋による環境破壊ですが、これらに関しては既に様々な国(フランス・ケニア・イギリスなど)で禁止する動きが始まりました。プラスチックストローの利用を廃止した企業も話題になりましたね。これからの時代に必要な視点は、「いかにゴミを出さないか、無駄なものを作らないか」ということなのではないでしょうか。作ることをもっと真剣に考えなくてはなりませんよね。
新しい価値はリサイクルへの新たな視点から生まれる
アパレル業界に身を置く人々の中には、製造によって引き起こされる環境破壊やファストファッションビジネスにつきまとう劣悪な労働環境に心を痛めている人もいます。今回は2つのケースをご紹介します。
【CASE 1】
アメリカンアパレル出身の Iris Alonzo と Carolina Crespo による、“Everybody.World”というブランドでは、「ファッションは汚染物になり得る」、「継続的に地球のことを考えなければいけない」というメッセージのもと、廃材を再利用した100%リサイクルのコットンで製造された衣類を販売しています。
【CASE 2】
Kay Wongさんは、Daydream Nationというファッションレーベルを立ち上げましたが、現在は服作りではなくアート作品を発表する活動をメインにしています。洋服を作るときに出る生地の端切れを使って人間の臓器を象ったアート作品(Fashion Anatomyのシリーズ)を制作し、現代のファッション業界のあり方に疑問を投げかけています。新しい洋服を作ることよりも、無駄な消費を抑えるシステムがあれば、安い服を作るために働く人々が命を落とすこともない、と考えています。
無駄なものとして捨てられていたものから新たな価値を生み出す取り組みとして、今回はこの2つのケースをご紹介しました。単なるリサイクルに留まらない新たな視点と信念を感じるこれらの取り組みは、私たちに対して「作ることの意味」を考えるチャンスを与えてくれているのではないでしょうか。
新しい製品を「作って売る」という単純なプロセスよりも、「どのように作るか」「どのような価値を付加するか」「製品を通して何を伝えるか」ということを、これまで以上に真剣に考えなくてはならない時代がやってきたとお伝えしたい。
本当のリサイクルは使い回しにあらず!
日本国内でも、「使わなくなった製品(服)を回収して発展途上国に寄付する」という取り組みは「一時的なリサイクル」の主流になっています。マルイの『マルイの下取り』やユニクロの『全商品リサイクル活動』の場合は、回収した品物を途上国や被災地へと寄付する仕組みである為、一時的なリサイクルといえます。
「無駄をなくそう」という意図を感じることはできますが、厳しい言い方をすれば「いらなくなったものを他の場所にうつしているだけ」とも言えます。もっと極端なことを言ってしまえば、「ある場所ではゴミとして扱われたものを、他の場所に引き取ってもらっている」ということになるわけです。しかし、使い回しを主体とするリサイクルには必ず限界がやってきます。今後は、「いらないもの」「使わないもの」を再利用できるようなリサイクル環境を整えていかなければ、本当のリサイクルは実現できません。
「もったいない」の精神を活かすなら今!買わないお洒落もじわじわと流行中
最近では、「手持ちのアイテム10点だけで、10日間着まわす挑戦をしてみよう」という #10X10challenge などが、インスタグラム上で話題を集めており、消費者の洋服についての価値観が以前と変わってきている姿を垣間見ることができます。ミニマリストなども憧れの対象として取り上げられるようになってきました。「もったいない」気持ちや、「モノを大切にしよう」という気持ちが消費者の間でも高まってきていることが分かります。
一時的なリサイクルではなく、不要になった後の活用方法までを真剣に考えた取り組みを行うことができれば、その企業は現代の消費者にとっても魅力的に映ることは間違いありません。回収した製品を新たなものに変えていく取り組みは、現在でも幾つかの企業で実践されているようです。
例として、ワコールの『ブラ・リサイクル』や無印良品の『ReMUJI』、ゴールドウィングループの『グリーンダウンリサイクルプロジェクト』などでは、自社製品を回収して、燃料や新たな製品として生まれ変わらせる取り組みを行っています。H&Mの場合は、自社製品だけでなく様々な布製品を回収して、古着販売(Rewear)、リメイク・加工(Reuse)、繊維としての利用(Recycle)などを行い、回収した布製品の状態に応じて段階を設けたリサイクルを実践しているようです。
あなたならどのような取り組みができそうですか?
「社会的課題に取り組み、それを解決する業界を超えた構想を描き、その実現に共感した仲間づくりをして連携していく。」弊社が考える今後のあり方は、ここに集約されます。今、日本企業全体に最も必要なのは、こうしたビジネスプロデュースを実践していくこと、そしてそれを担える人材を育成する事が求められています。
需要に対してオーダーストアとなり、価格が下落し、大量に作られ続ける「服、服、服・・・。」
この最終到達地点がどうなっているのか?そこから新たなビジネスを組み立てることができないのか?身近な集団の知見やノウハウでは限界があります。
業界を超えた多様な背景の方々には予想だにしない知見や経験があります。「やりたいと思うこと」「求められていること」が明確であれば、自分で調べる、考える、仕掛けていく、そんな地道な行動から生まれます。
ビジネスプロデュースを可能とする弊社事業の背景
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