「クリエイティブディレクター」という曖昧すぎるその存在
なぜ旧来型のビジネスモデルから脱却できないのか?
今回は「クリエイティブディレクター」という「?」な職業の功罪について「売れない理由」と題し、課題の本質を掘り下げていきたいと思います。
イトキンがファンドのインテグラルに買収されましたね。非上場である為に詳細な財務データはないですが、インテグラル曰く、あと1年遅ければ債務超過で会社を清算しなければならないところまで来ていたと・・・。確かに販路の7割を百貨店が占める典型的な老舗企業。課題の本質について十分なアクションがとれなかった。その顛末がこの結果を招いてきたわけです。
「クリエイティブディレクター」という「?」な存在
それでは今回のテーマである「クリエイティブディレクター」という「?」な存在意義について持論を展開したいと思います。MDとして数値責任を背負っている立場の方にはきっと「そうそう!」と思って頂ける内容ではと思います。
ファッション業界は、とかく目に見えない「感性」を重視します。分析、検証を繰り返し数字の根拠を追いかけている反面、やれ「トレンドだ。コンセプトだ」挙句の果てには「そんな気分だから・・・」こんな理由や主観で商品政策を行う企業が未だ多く存在しています。
それらの指針を決めるのが今回の主役「クリエイティブディレクター」だったり「デザイナー」だったりするわけです。「えっそれはちょっと違うでしょ」なんて思っても「見えない価値」を判断する基準がないが故に、誰も何も言えない・・・。そんな不思議な環境が当たり前のように出来上がっているのがアパレル業界。「あなたと一緒に心中は出来ない」若かりし頃にそんな発言をした覚えがあります!?
彼らは数値責任がないが為に、好き放題「クリエイティブ」を利用します。確かに「独自性を追求する為に商品の差別化は必要である」この考え自体は間違っていません。しかし、それを証明する「根拠」や「裏付け」は一切存在しません。
売れる条件の本質を理解する
売れる条件というのは「誰の・どんな課題を・どうやって解決するか」すなわち「顧客」「課題」「解決策」という3つの要素しかありません。しかし、それらを考える前に「前提」自体が間違っていては、いつまでたっても「課題」は「課題」のまま永遠に残ります。
イトキンは40代以上の顧客をターゲットにし、ディレクターを重宝してきました。ワールドは著名なデザイナーを外部から招聘し、神のような存在として扱ってきました。それでどうでしょう?新たに始まった事業は遅かれ早かれ1年もすれば、将来性が見えてきますが、新規事業で目覚ましい結果を残せたブランドはありますか?数える程しかないはずです。
そこに「違和感」を感じつつ進めてしまう悪しき慣習に私は警報を鳴らします。
先進企業から見る商売の原理原則
ITを中心とするベンチャーや先進企業はユーザーに「価値を感じてもらう」ことを第一に考えます。そしてそのサービスの元となる戦略やアイデアを徹底的に検証します。その検証基準が正しいのか?実際利用するユーザーにインタビューし、その仮説が正しかったかどうかを確認します。又そんな動きから発見した「課題」や「アイデア」を新たにサービスに付加し反映していきます。そんな本質的なPDCAサイクルを回しながらブラッシュアップを繰り返し「顧客の本質的価値」にサービスを近づけていくわけです。
アパレル業界のPDCAのレベルを考えてください。多くのパターンは週の結果が揃う月曜日にデータを集め、それに伴った会議を開催するでしょう。同じような指標について議論をし、今週の打ち手として発信する。時間をかけている割には、やっている事自体は小手先の手段でしかありません。びっくりする程このワンパターンな会議体は大手アパレル企業でも、10数年形式が変わっていません。
ゴールに直結する価値ある仕事をシンプルに「実行」し「検証」を繰り返す
他業界には、見習うべき「答え」はゴロゴロ転がっています。それらをアパレル流にカスタマイズして「実践」「行動」に結びつけていく事が必要です。「ゴールは何?」「そのゴールを達成するには何をしたらいいのか?」時代の変化に合わせて、その「やり方」自体も変化させないと到底勝ち残る事など出来ないでしょう。
「やったけどダメだった」「だから失敗だ」など安易に決めつける声をよく聞きます。しかし継続し努力をした先にしか、新たな「アイデア」や「気づき」はありません。多様なニーズが存在するという事は、多様なチャンスも転がっています。そんな「マインドと新たな仕組みを」考えていく事で「成長のエンジン」を回す事ができるはずです!
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