アパレル業界に経済産業省から勧告「不合理な商慣習」の本質とは?
経済産業省からアパレル業界の「不合理な商慣習」について勧告
「2016年6月17日、経済産業省からアパレル業界に見られる不合理な商慣習を批判し、経営の改善を促す。旨、勧告がありました」
アパレル業界の「不合理な商習慣」が、とうとう国から正式に「是正勧告」を受けてしまったという事実。業界人から見れば、何ら常識となっている慣習が、他業界から見れば何とも意味不明な商慣習に映っているわけです。
今回は、業界に蔓延する異常な商慣習を今いちど振り返り「なぜ!?」を考えるきっかけとなるようまとめていきたいと思います。
その前に、直面しているアパレル業界の実情を時系列で見てみましょう!
■アパレル業界が陥っている2つの「悪循環」とは?
1つ目は、指摘を受けている「不合理な商習慣」について。
経済産業相は衣料品の国内市場が縮小する中で過剰な供給と安売りが続き、産業が衰退する懸念について述べています。
無難な「流行」の衣料品を出して供給過剰となっており「バーゲンで価格を下げて販売されることが常態」となっていると指摘。コスト削減のしわ寄せが設備投資や人材育成の停滞につながり、商品の陳腐化と消費者離れという「悪循環」に陥っていると分析。
(経済産業省)
確かに、ビジネスモデルそのものが、プロパー消化率を気にすることなく、セール、値下げで客数を確保し、収益を上げる構造がパターン化されている企業は実に多い。
何も今に始まったことではありません。
売り上げが伸び悩む度にセールを敢行し、まさしくその場しのぎの利益を出す。価格以上の価値を見出せず、画一的な業務フロー、ルーティーンをグルグル回すだけの、付加価値を蓄積できない数十年変わらぬワークスタイル・・・。
そんなおかしな状況になりつつも、繰り返してしまう「悪循環」・・・。
かつての成功体験を持った大手アパレルは、未だこのルーティーンにしがみつき、努力しても成果が出ないスパイラルにはまっています。
「成果が出ない原因は時流にあった正しいやり方を実践していないだけ!」
2つ目は、未だ変わらぬファッション・トレンドサイクル
最近、トピックスとして上がった「バーバリー」を例にお伝えします。
ショーから半年待たなければ店頭やECで買えないという業界の常識。バーバリーはいち早くショーのライブ配信をきっかけに、ランウエイ上の商品をすぐに直接注文できるオーダーシステム、メディアキャンペーンなどを他に先がけて実践してきました。
今後は、メンズ、ウィメンズ年4回あるランウェイを年2回とし、ファッションウィーク時にはランウェイを開くことをやめることを発表しています。
そもそも我々含め、一般消費者はデジタル活用によって得たい情報を瞬時に得て、満足感を得られる世界に住んでいます。そんな背景がありながら「いま見たものが今なぜ買えない?」率直にそんな疑問を持っているんじゃないでしょうか?
「なぜ、欲しい商品を購入するのに、6カ月も待たなくてはいけないのか?」
6ヶ月前は確かに欲しかったけど、いざ手に入る時期には「そんな気分じゃない」
移ろいやすいファッションだからこそ当たり前の感情かなと・・・。
業界の仕組みを知らないからこそ、これが一般消費者の本音でしょう。
又、ショーを年2回にすることは、ブランド側の労力や経費を考えると、確実に大きなメリットとなるはずです。
余談ですが、私もバイヤーとして海外出張を繰り返していた時期は、年4回、メンズ、ウィメンズのファッションウィークに3年続けて行っていた時期があります。
各都市を移動する為、1回行くにも最低2〜3週間は海外にこもるわけです。
側からから見たら「海外出張いいなー」なんて言われるものの、時差で半端なく疲れるし、同じ作業をする上で同時開催してくれたらどれだけ効率的か!」今更ながら考えてしまいます。
まずは「なぜ!?」を考える必要性
「私たちはそもそも誰の為にビジネスをしているのか?」
バーバリーのクリストファーベイリーは言っています。
『僕たちは、顧客の期待に十分応えているだろうか?』と考えてきた。ランウエイショーでみんなに喜んでもらっても、6カ月待たないと商品に触れることができないなんて、ばかげている」と話し、「大事なのは顧客。だから僕らは、『自分たちのやり方を変えたんだ』
この問題は、あらゆる制約や、しがらみがあって簡単には解決できる問題ではありません。しかし、当事者が「なぜ?」「それで?」「どのように?」を常識と切り離し、深く考えなければ、進められるものも進みません。「気付き」があって「なぜ?」を思い「行動する」につながるわけです。
そして、それらの指針となるポイントはたった一つ!
「消費者の本質的な欲求を理解する」ただそれだけなのです。
消費者は自分にどれだけのベネフィットがあるのかを無意識に考えている
「消費者は製品を買うのではない、製品がもたらす恩恵を買うのである」
マーケティングではよく使われる言葉です。つまり、顧客は常に「その商品を買ったら自分にどんないいことがあるのか?」そのベネフィットを考えています。あなたにはその「いいこと」を顧客のイメージと一致させることが求められているのです。
ベネフィットは何も商品だけではありません。豊富な知識を持ったスタッフをそろえる、もしくは育てることで顧客に多くの知識を与え「この店に行くと様々な新しい情報が手に入る!」と思わせることもベネフィットの1つです。極論言えば、そんな発想を確実に実践さえできていればいいわけです。
これを知って実行に移せたら新たな「成長」を築ける
今回はアパレル業界が抱える2つの「不合理な商習慣」についてお伝えしてきました。最後に、常識を疑ってその先にある何かを見つけるためのヒントを提言します。
「新しい価値は顧客によって異なる」
当たり前すぎて「はっ?」と思った方もいるでしょう。しかし、そんな当たり前のことを、リーダー自ら語り、実務まで促す考え方、発想が足りなすぎる!
顧客1人1人が求めている「ベネフィット」は異なります。従来のように価格を操作するだけでは、もはや到底対応することができません。このような環境下で求められる能力は「顧客がどのようなベネフィットを求めているか」を瞬時に、そして的確に分析しそれを提供する力です!
これを実行するためには「経験」と「データ」が必要になります。このような特徴がある顧客にはこの商品を薦める、この時期にはこの商品、スタッフの明るく丁寧な対応、中にはただ「話」をしに来る顧客もいるかもしれません。
そのような1つ1つの状況を的確に克服していく必要が求められます。そして今まで以上に、経営者の「資質」や「意思決定のスピード」は重要なポイントとなってきます。
データを集め、分析すること。あなたの経験をスタッフと共有し指導すること。時には失敗すること、ストレスを感じること、挫折することもあるでしょう。しかし、その「手間」を惜しむようでは残念ながら今後生き残っていくことは難しいでしょう。
それでも希望はあります。
最後にこれだけはもういちど言わせてください。今あなたがやるべきこと。
それは、「古い成功体験や業界慣習を捨てて、
消費者の本質的な欲求を理解する」ここがスタートラインです!
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