今の消費者は「本物」以上に「本質」を見極める目を持っている

クラウド型2

『本物と偽物がある中で、本物を買うメリットを感じていますか?』

「スナイデル」を展開するマッシュホールディングスが商品模倣に対する刑事告訴を行いその当事者が逮捕された事件。過去同じく模倣に関する事件を経験したからこそ個人的にその結果に対する驚きと新たな可能性を感じています。

決して良い思い出ではありませんが、そこにはグレーゾーンと言われる所以がしっかり存在します。リアルな体験談を基に今回のテーマを掘り下げていきますね。

当時私は某セレクトショップの事業部長として事業の責任者を任されていました。リーマンショック後の買い控えに直面し業界全体が今以上に厳しい時期。そんな業界がピリピリムードである時期に事件は起こりました。月曜朝、週次会議がある為いつもより早めの出勤。「さて、先週の売上は」とデータ確認しようとするも、朝から電話コールのラッシュ。それもすべて僕あてで・・・?

内容は「自社の商品が競合企業G社のデザインを模倣している」といったFAXがG社から全国のデベロッパーに通達されているとのこと??要は自社(当時)がG社商品をパクっているという主旨の内容。まさに寝耳に水の出来事に騒然、唖然。その後事実確認を急ぎ、あらゆる対応に追われたことを覚えています。

原因は、外部から買い付けた商品がG社に酷似した商品であり、その商品に自社のブランドタグ(Wネーム)が付いていた事から発覚した問題。自社サイドは一切の情報を得ることなく、錯誤によって買い付けた商品。問題なのは、ブランドタグが付いている以上責任問題が問われるのか?あらゆるリスクへの対応。しかしそんな心配もその後、顧問弁護士に委ねた時点で意外な程あっさりと決着が付いたのです。

picjumbo.com_HNCK8997まず要点として上がったのが「意匠権」の範囲。
【意匠権(いしょうけん)とは、新規性と創作性があり、美感を起こさせる外観を有する物品の形状・模様・色彩のデザインの創作についての権利】


知的財産権の定義で「意匠」における判断基準は非常に難しいのが実情です。意匠登録したとして、その新規性と創造性が美観をおこさせる外観なのか?そんな物を定義させる事自体、そもそも無理なわけです。

流行を追うアパレル商品はどうしても同質化した商品が出てきてしまう・・・。そんな解釈が、壁となりそれ以上の進展を難しくしてきました。パクられたとしてもパクられた側が有利に告訴を立証することが難しいのです。グレーゾーンであるが故に深く追求できない歯がゆさ・・・。よくわかります。

これらの経験から、今回「マッシュHD」が刑事告訴を行い、その当事者が逮捕された一連の事件はアパレル業界に蔓延している模倣問題に対し一石を投じた非常に意義のある結果だと感じています。

「目に見えないブランド資産」を守る為、緻密な「証拠」や「常習性」「警告」による再三の異議を辛抱強く申し立てた企業努力の賜物です。前例にない結果となった今回の事件。模倣に悩む企業や個人にとって今回の判決は非常に大きな意味をなします。

『本物と偽物がある中で、本物を買うメリットを感じているか?』

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こちらは単純に消費者心理の変化がすべてでしょう。能動的に情報収集できる環境によって多様な価値観が生まれている時代。単純に『消費が一番!』という時代と比べて違うのは当たり前。その為ブランド力の差別化は以前に比べ格段に難易度が上がりました。

今は金銭的な格差も出てきているし、消費の選択肢が増えているの為、ファッションは特別にこだわるものではなくなっています。一昔前のようなお金をかけて『ブランド』を着る!というメリットは確実に減っていますよね。

「本物か偽物かを決めるのは消費者である」

その消費者が本物以上の価値と認めるものがあればそちらを選びます。いいものはいいし悪いものは悪い。今の消費者は「本物」以上に「本質」を見極める目が備わっているわけですから。

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